気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -


「ま〜お〜!こっち!」

「おはよ!奈瑠」

「ここ、取っておいたよ」

「ありがとう」


部屋の片付けは少しだけ進んだ。

家具の配置を決めて、教科書類のダンボールを開けることはできた。

今からの講義の教科書もなんとか見つけ出すのとかできた。


「なんか髪乱れてない?」

「慌てて出てきたから…」

「あれ、もしかして引っ越し?」


この子は、三浦 奈瑠(みうら なる)。

高校からの仲のいい友達。

ちょっと気は強いけど、友達の思いの優しい子。

今は小学校教諭になるため、日々一緒に頑張っている。

引っ越しのことも奈瑠には詳しく話していた。


「そ、昨日午後のコマ終わってから引っ越し業者来て大きな荷物とか段ボールとか運び込んでたんだよね」

「大変だったんじゃない?」

「シェアハウスの人たちがいろいろ対応してくれたから大丈夫だったよ」

「そうだ!シェアハウスどうだった?」

「みんないい人だったよ」

「ほんと?」

「うん。優しい先輩もいたし」

「へぇ?」

「しかもね、その先輩が——」


私は少し声を潜めた。


「柊弥さんだったの」

「……は?」


奈瑠の動きが止まる。


「柊弥って……柏木柊弥!?」

「そう!」

「やっば!茉桜元々仲良いしよかったじゃん」

「奇跡的すぎるよね」

「でも問題だね」

「なんで?」

「あの柏木 柊弥だよ?柊弥さんのファンなんて死ぬ程いるんだから、敵に回すなよ〜?」

「えー……こわ……」


思わず本音が漏れる。

昨日は久しぶりの再会が嬉しくて、そんなこと全然考えていなかった。

でも言われてみれば。

柏木柊弥は、蒼明大学では知らない人の方が少ないくらい有名な存在だ。

そんな人と同じ家に住んでいるなんて知られたら——。


「……なんか急に大学行きたくなくなってきた」

「もう遅いって」


奈瑠は楽しそうに笑った。

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