気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「で?他の住人は?」
奈瑠が興味津々な顔で身を乗り出す。
「んー……」
私は少し考える。
昨日は引っ越しでバタバタしていたし、まだそんなに話せていない。
それでも第一印象ならある。
「希遥さんっていう女の先輩がいるんだけど」
「うん」
「めちゃくちゃかっこいい」
「かわいいじゃなくて?」
「かっこいい」
即答だった。
「背高いし、綺麗だし、なんかモデルさんみたい」
「へぇ〜」
「しかも優しい」
「完璧じゃん」
本当にそう思う。
昨日会ったばかりなのに、なんだか安心できる人だった。
「で?」
奈瑠がニヤニヤする。
「で?まだいるんでしょ?」
「あー……」
思わず言葉に詰まる。
なぜって……ねぇ。
「何その反応」
「いや……同い年の男の子なんだけど」
「ほう」
「なんか感じ悪い」
「え?」
「めっちゃ感じ悪い」
奈瑠が吹き出した。
「そんなに?」
「そんなに。多分奈瑠の想像超えてくる」
私は昨日のことを思い出した。
……うん、思い出せば思い出すほど感じ悪かった。
「口数少ないし」
「うん」
「目つき怖いし」
「うん」
「言い方冷たいし」
「うん」
奈瑠が笑いを堪えている。
「でも……」
「でも?」
少しだけ考える。
「なんか変なんだよね」
「変?」
「感じ悪いのに、ちゃんと輪にはいるっていうか」
昨日のリビングを思い出す。
希遥さんや柊弥さんと普通に話していた。
笑ってはいなかったけど。
「あと今朝、共有スペースにいた」
「いた?」
「朝6時」
「早っ」
「コーヒー飲んでた」
「それだけ?」
「それだけ」
奈瑠は数秒黙ったあと、
「茉桜さぁ」
「なに?」
「その人のこと結構見てるね」
「は?」
思わず変な声が出た。
「違う違う違う」
「まだ何も言ってないけど」
「絶対変なこと考えたでしょ!」
奈瑠は楽しそうに笑う。
「まあ、仲良くなれたらいいね」
「……どうだろ」
正直、あの無愛想な人と仲良くなれる未来はあまり想像できなかった。