気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
気付けば[So side]
学園祭が終わって数日。
キャンパスはいつもの静けさを取り戻していた。
共用倉庫の前を通る。
ふと足が止まる。
あの日。
茉桜が大きな看板を持ち上げて、危うく倒れそうになった場所だった。
「……」
思い出す。
学祭の日。
湊都と向き合っていた茉桜。
泣きそうになっていた横顔。
無理に笑おうとしていた顔。
あの時、どうしてあそこまで腹が立ったのか。
どうして放っておけなかったのか。
まだ答えは分からない。
でも。
ひとつだけ、分かることがあった。
講義の合間。
ラウンジを歩いていても。
食堂へ向かう途中でも。
気付けば、人混みの中からあいつを探している自分がいる。
「……重症だな」
思わず、小さく笑った。
その言葉の意味は、自分でもまだよく分からない。
好きとか。
恋とか。
そんな大げさなものじゃない。
……たぶん。
それでも。
「想!」
後ろから逸晟の声が飛んでくる。
「またぼーっとしてる!教授来るぞ!」
「今行く」
返事をして歩き出す。
その途中。
遠くの中庭で笑っている茉桜の姿が目に入った。
教育の友達に囲まれて、いつものように楽しそうに笑っている。
その笑顔を見た瞬間。
胸の奥が、少しだけ軽くなった。
「……なんなんだよ」
誰にも聞こえないくらい小さく呟く。
答えは、まだ出ない。
でもきっと。
この秋は、まだ終わらない。