気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「希遥さん」
「んー……?」
「今日の最高気温、5度ですって」
「聞きたくないぃ……」
希遥さんは毛布を頭までかぶり、さらにソファへ沈んでいく。
その頃。
2階からは、工具の小さな音が聞こえていた。
カッ、カッ、と規則正しく響くカッターの音。
「想くん、今日も模型かな」
「昨日も夜中まで作業してたよ」
「寝不足なんじゃないかなぁ」
「本人は気にしてないんじゃない?」
「柊弥さんは?」
「部屋」
「今日もですか?」
「卒論終わんないって昨日騒いでた」
「おーい、泣いてません」
ちょうどそのタイミングで、2階から声だけ返ってくる。
「聞こえてたんですね」
「全部聞こえてる」
「なーんだ、バレたか」
そんなやり取りに、自然と笑い声が広がった。
忙しい日が続いていても、この家の空気は変わらない。
「想、昨日夜中の2時くらいまで起きてたよ」
「2時!?」
「じゃあ柊弥さんも?」
「俺は2時には布団に入った」
「それでも十分遅いですよ」
「卒論が終われば寝る」
「その言葉、この1か月くらいずっと聞いてますけど」
「……鋭いな」
また笑いが起きる。
この家に住み始めて半年。
同じ屋根の下で暮らしながら、それぞれが違う夢へ向かって歩いている。
教育。
建築。
デザイン。
法律。
頑張っている姿を毎日のように見ているからだろうか。
私も負けていられない。
来年の教育実習に向けて、もっと頑張ろう。
そんな気持ちが、少しずつ大きくなっていた。