気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -


「寒いですね」


マグカップを両手で包みながら呟く。


「今日は特にねぇ」


希遥さんはこたつから顔だけ出して返事をした。


「もう私はここから動かない」

「朝ご飯は?」

「誰か運んで」

「却下です」

「冷たい」


そんなやり取りをしていると、階段から足音が聞こえた。


「おはよう」


想くんだった。

相変わらず少し寝癖が残っていて、設計図の入った筒とさっきまで作っていたであろうを模型の部品が入った箱を持っている。


「おはよう」

「おはよう」


冷蔵庫から牛乳を取り出す想くんを見ながら、私は声をかける。


「今日も大学?」

「模型」

「最近ずっとだね」

「今が一番忙しい」


短い返事。

でも、その声には少しだけ疲れが混じっている気がした。


「ちゃんと寝てる?」

「寝てる」

「昨日も2時だったじゃん」

「……」

「図星」

「柊弥が喋ったな」

「聞こえてました」


想くんは小さくため息をつく。

その時だった。


「ん?」


私は窓へ近付く。

白いものが、ふわりと目の前を横切った。


「あ……」

「どうした?」

「想くん、雪」


私が窓の外を指差す。

想くんも隣へ来て、同じように外を見る。


「……ほんとだ」


白い粒が、静かに空から降り始めていた。


「希遥さん!」

「え?」

「雪!」

「えっ!?」


希遥さんが勢いよくこたつから飛び出す。


「初雪じゃん!」


リビングが一気に賑やかになる。

私は窓の向こうを見つめながら、小さく笑った。

今年、初めての雪だった。


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