気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
窓の外では、白い雪が静かに降り続いていた。
「すごーい!」
「初雪だぁ!」
私と希遥さんは窓際に並んで、しばらく外を眺める。
その後ろを、想くんはちらりと一度だけ窓へ目を向けると、そのまま何事もなかったようにキッチンへ向かった。
コポコポ、とコーヒーメーカーがお湯を落とし始める。
「想、雪だよ?」
希遥さんが振り返って声をかける。
「だから?」
「なんかいいじゃん!」
想くんはマグカップを取り出しながら、淡々と答えた。
「大気中の水蒸気が寒さで結晶化しただけだろ。雨と同じ」
「現実的すぎるでしょ」
「事実」
「夢がないなぁ」
思わず笑ってしまう。
雪を見てはしゃぐ希遥さんと、それをあっさり現実に引き戻す想くん。
こういうところ、本当に正反対だ。
だからこそ、この2人のやり取りは見ていて飽きない。
「……え」
不意に、希遥さんが小さな声を漏らした。
「どうしたんですか?」
「やめた」
「え?」
「雪見るの」
「なんで?」
希遥さんは真顔で窓の外を指差す。
「雪が降るってことは、外めちゃくちゃ寒いってことでしょ?」
「今さら?」
「外出たくなくなった!」
「そりゃ雪だからな」
想くんがコーヒーをひと口飲みながら、さらっと言う。
「せっかくテンション上がってたのに!」
「勝手に下がっただけだろ」
「想は冷たい!」
「外よりはあったかい」
「そういう問題じゃなーい!」
そのやり取りを見ていた柊弥さんが、くすっと笑った。
「相変わらず希遥は希遥らしいな」
「褒めてる?」
「もちろん」
「やった!」
嬉しそうに返事をした次の瞬間。
「……でもやっぱ寒い」
そう呟くと、希遥さんはあっという間にこたつへ戻り、毛布を頭までかぶった。
「撤収しまーす」
「早っ」
リビングに笑い声が広がる。
窓の外では、初雪が静かに降り続いていた。