気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
朝食を食べ終え、時計を見る。
「そろそろ行こっかな」
コートを羽織り、マフラーを首へ巻く。
玄関でブーツを履いていると、後ろから階段を下りる足音が聞こえた。
「行くの?」
振り返ると、想くんもリュックを肩に掛けていた。
「想くんも大学?」
「今日提出あるから」
「模型?」
「うん」
そう言いながら靴を履く。
玄関の扉を開けた瞬間、冷たい空気が一気に流れ込んできた。
「寒っ……!」
思わず肩をすくめる。
道路の端や植え込みには、うっすらと雪が積もっていた。
さっきまで降っていた雪は、もうほとんど雨へ変わっている。
「少し積もってる!」
私はしゃがみ込んで、植え込みの雪へそっと指を伸ばした。
冷たい。
けれど、それがなんだか嬉しい。
「子どもか」
後ろから想くんの声がする。
「だって初雪だよ?」
「毎年降る」
「そういうことじゃないの」
立ち上がって振り返ると、想くんは少しだけ呆れたような顔をしていた。
……と思った、その時。
「足元」
「え?」
「滑るぞ」
見ると、玄関前のタイルが雨で濡れて光っていた。
慌てて1歩下がる。
「危なかった……」
「だから言った」
「ありがとう」
想くんは「別に」とだけ返して歩き始める。
私はその背中を追いかけた。
冷たい冬の空気。
白くなる吐息。
肩が触れそうなくらいの距離を並んで歩く。
それだけなのに、今日はいつもより少しだけ冬を近く感じた。