気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
白い息を吐きながら、想くんと並んで大学までの道を歩く。
「さっきの雪、積もると思う?」
「この気温じゃ無理」
「夢ないなぁ」
「現実だから」
思わず笑う。
さっきからこんなやり取りばかりだ。
大学へ近付くにつれ、同じように登校する学生の姿も増えてくる。
「寒いー!」
「手袋持ってくればよかった!」
そんな声があちこちから聞こえる。
キャンパスへ入ると、芝生の上にはうっすらと雪が残っていた。
「まだ残ってる!」
思わず駆け寄ろうとして——
「走るな」
「え?」
「滑る」
想くんが短く言う。
「今日は何回それ言うの?」
「お前、朝から2回転びそうになってる」
「……1回だよ」
「玄関と今」
「今は転んでないもん」
「転びそうだった」
悔しくて頬を膨らませる。
「心配しすぎ」
私がそう言うと、想くんは少しだけ間を空けて、
「違う」
とだけ答えた。
「じゃあ何?」
「同じ家のやつが大学来る前に怪我したら面倒」
「なにそれ」
「事実」
そう言って先へ歩いていく。
……またそれだ。
優しいことをしても、最後は必ず素っ気ない言い方をする。
でも。
その”面倒”の中には、少しだけ優しさが混ざっていることを、私はもう知っていた。