気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
タクシーを拾って、一緒に乗り込んでくれた奈瑠。
「奈瑠、いいの?」
「いいのいいの。今日バイトもなくて暇だったし」
「ほんとごめん……。ありがとう」
「明日も無理せず休みなよ」
「そうだね……。さすがに明日は休んだ方がいいかも」
朝よりも喉の痛みは強くなっていた。
頭もぼんやりして、体の節々まで重たい。
窓の外を流れる景色を眺めるだけで精一杯だった。
いつもなら歩いて帰る道も、今日はタクシーだとあっという間だった。
桜ノ木ハウスの前で車が止まる。
「奈瑠、ありがとう」
「ううん。私もここで降りる」
「え?」
「このまま家まで乗ったら料金倍くらいになりそうだし。ここからなら歩いて十五分くらいで帰れるから」
「確かにね」
奈瑠が笑って料金を一緒に確認してくれる。
私は何とか荷物を持って車を降りた。
玄関の扉を開ける。
「ただいま……」
少しかすれた声が、静かなリビングに響いた。
「おかえり……って、えっ!?」
ソファでくつろいでいた希遥さんが勢いよく立ち上がる。
「茉桜ちゃん!?どうしたのその顔!」
駆け寄ってきた希遥さんが、私のおでこにそっと手を当てた。
「熱い!」
「保健室で測ったら、38.9度あって……」
私の代わりに奈瑠が状況を説明する。
「大学で熱が上がっちゃって。保健室の先生からも今日は帰った方がいいって言われたので、送ってきました」
「そうだったの……。奈瑠ちゃん、ありがとう」
「いえ。それじゃあ私はこれで」
「ほんとにありがとうね!」
奈瑠は私に「ゆっくり休んでね」と小さく手を振ると、そのまま帰っていった。
玄関の扉が閉まる。
その音とほぼ同時に、2階から足音が聞こえた。