気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
部屋のベッドに横になる。
熱のせいか、天井が少しぼやけて見えた。
「茉桜ちゃん、水ここ置いておくね」
希遥さんが水の入ったコップをサイドテーブルへ置く。
「想が準備してくれたの。足りないものは今買いに行ってるみたい」
「ありがとう…」
「おかゆ作るから、食べられそうなら食べよう?」
部屋を出ようとしたその時だった。
コンコン。
控えめなノックが聞こえる。
「入るぞ」
想くんだった。
片手にはドラッグストアの袋。
もう片方にはスポーツドリンクが入った袋を持っている。
「想、早かったね」
「近くの薬局」
そう言って袋の中身を机へ並べていく。
解熱剤。
冷えピタ。
のど飴。
スポーツドリンク。
ゼリー飲料。
「こんなに……」
「熱あると食えなくなるだろ」
短く答えながら、薬の箱を手に取る。
「解熱剤は食後。おかゆ食べてから飲め」
「……うん」
「冷えピタはここ」
机の端へ置く。
「体温計は?」
「下にあるよ!」
希遥さんが返事をすると、想くんは小さく頷いた。
「じゃあ希遥」
「うん?」
「熱、こまめに測ってやって」
「任せて!」
想くんはそれだけ言うと、空になった袋をまとめ始めた。
「想くん」
「何」
「ありがとう」
その言葉に、想くんの手がほんの少しだけ止まる。
「……別に」
短く返事をすると、そのまま部屋を出ていった。
静かに閉まるドア。
「もう〜」
希遥さんが小さく笑う。
「想ってさ、実は優しいよね」
「……そうかな」
「うん。照れ屋だから絶対言わないけど」
私は閉まったドアをぼんやり見つめる。
確かに。
ぶっきらぼうで、口数も少なくて。
素直じゃない。
でも。
必要なものは全部そろえてくれていた。
そんなところが、少しだけ想くんらしいなと思った。