気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
夜中。
目が覚めた。
時計を見ると、午前2時を少し過ぎている。
喉が渇いた。
体は相変わらず熱くて、額に貼った冷えピタもぬるくなっていた。
もう一度体温を測ると、39.6℃の表示。
「……上がってる」
思わず小さくため息が漏れる。
薬を飲んだのに、熱は下がるどころかさらに上がっていた。
希遥さんを起こすのは申し訳ない。
少しだけ水を飲めば楽になるかもしれない。
私はゆっくり布団から起き上がった。
立ち上がった瞬間。
ぐらり。
視界が大きく揺れる。
「……っ」
壁に手をつきながら、何とか部屋を出る。
廊下は静まり返っていた。
階段を下りる頃には、息も少し上がっている。
あと少し。
キッチンまで行けば、水が飲める。
そう思った、その時だった。
急に視界が白く霞む。
力が入らない。
「……あ」
その場にしゃがみ込むように座り込んでしまう。
立ち上がろうとしても、足に力が入らない。
その時。
カチャ。
静かな音とともに、2階の部屋の扉が開いた。
「……茉桜?」
聞き慣れた声だった。
顔を上げると、想くんがこちらを見ている。
手にはカッターマットと定規。
まだ模型の作業をしていたみたいだ。
私の姿を見るなり、足早に駆け寄ってくる。
「何してんの」
「……水、飲もうと思って」
かすれた声で答える。
想くんは何も言わず、私の額へ手を当てた。
「あっつ……」
自分の手で触れるより、ずっと熱く感じたのか、小さく眉を寄せる。
「立てる?」
「……うん」
答えたものの、力が入らない。
立ち上がろうとした瞬間、また視界が揺れた。
そのまま倒れそうになった私を、想くんがとっさに受け止める。
「……だから無理だろ」
小さく息をつく。
その声は呆れているようで、どこか焦っているようにも聞こえた。
「ごめん……」
「いい」
短く返すと、私の腕を自分の肩へ回した。
「つかまって」
「……うん」
歩こうとしても足が思うように動かない。
想くんは何も言わず、私の体重を支えながらゆっくり歩き始めた。