気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
小さくそう呟くと、想くんは体温計を机へ置いた。
少し考えるように黙り込む。
それから静かに口を開いた。
「寒気は」
「……少し」
「吐き気」
「ない」
「頭」
「痛い……」
短く確認していく。
私はそのたびに、小さく頷いた。
想くんは一度だけ息をつくと、キッチンへ向かった。
冷凍庫を開ける音。
氷を袋へ移す音が聞こえる。
しばらくして、タオルに包んだ氷枕を持って戻ってきた。
「使え」
「……ありがとう」
「朝になっても下がらなかったら病院」
私は小さく頷く。
「今日は動くな」
「……うん」
「水、なくなったら呼べ」
それだけ言うと、想くんはソファの向かい側へ腰を下ろした。
「え?」
「模型」
そう言って、さっき持っていたカッターマットを机へ置く。
「まだやるの?」
「終わってない」
淡々と答えながらも、作業を始める気配はない。
私はぼんやりその横顔を見つめる。
「……部屋戻らないの?」
「お前がまた勝手に動きそうだから」
その一言に、思わず笑ってしまった。
「笑うな」
「ごめん……」
「だから謝るな」
リビングには、小さな時計の音だけが響いている。
私は氷枕に頭を預けながら、ゆっくり目を閉じた。
隣に誰かがいる。
それだけで、不思議と安心できた。