気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
次に目を覚ました時には、カーテンの隙間から朝の光が差し込んでいた。
ぼんやりと時計へ目を向ける。
6時30分。
……朝だ。
夜中のような息苦しさはない。
体はまだ熱っぽいけれど、昨日よりずっと軽かった。
ゆっくりと体を起こす。
その時だった。
「……え」
ソファのすぐ横。
ローテーブルに腕を乗せ、その腕を枕にするようにして、想くんが眠っていた。
思わず息をのむ。
こんなに近くで寝顔を見るのは、初めてかもしれない。
普段はぶっきらぼうで、どこか近寄りがたい表情ばかり見ているから。
眠っている顔は思っていたより穏やかで、少しだけ幼く見えた。
……昨日、ずっとここにいてくれたんだ。
模型のカッターマットは机の端に置かれたまま。
作業をしていたはずなのに、いつの間にか眠ってしまったらしい。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
起こさないように、そっとソファから降りる。
テーブルの上には体温計と、半分ほど残ったスポーツドリンク。
使い終わった冷えピタの袋も、そのまま置かれていた。
私は静かに体温計を手に取る。
ピピッ。
小さな電子音が鳴る。
37.8℃。
「……下がってる」
平熱よりはまだ高い。
それでも、夜の39.8℃を思えば、ずいぶん楽になっていた。
ほっと息をついた、その時。
「……熱」
寝起きの少しかすれた声が聞こえた。
振り返ると、想くんがゆっくり顔を上げる。
少し乱れた髪。
まだ眠そうな目。
いつもの無表情とは違う、少しだけ気の抜けた表情だった。
「37.8℃」
私がそう答えると、想くんは小さく頷く。
「……よかった」
その一言だけ言って、大きく息をつく。
安心したように背もたれへ寄りかかる姿を見て、思わず笑ってしまった。
「何」
「ううん」
「笑う元気あるなら大丈夫そうだな」
そう言って立ち上がると、想くんは軽く伸びをした。
「コーヒー淹れる」
「朝から?」
「眠い」
それだけ言ってキッチンへ向かう背中を見送りながら、私は小さく笑った。
昨日の夜。
“水、なくなったら呼べ”
そう言ってリビングに残った理由は、やっぱり私を心配してくれていたからなんだ。
そんなことを思うと、胸の奥が少しだけ温かくなった。