気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「想くん」
「何」
「昨日……寝てないの?」
「途中で寝た」
「ここで?」
「気付いたら」
テーブルの上に置かれたカッターマットを見る。
本当に、作業をしながら寝落ちしてしまったみたいだ。
「ごめんね」
思わず口をついて出た言葉。
想くんは小さくため息をついた。
「だから謝るな」
「でも……」
「風邪ひいたやつが気にすることじゃない」
その言葉が、少しだけ嬉しかった。
「水飲め」
「うん」
スポーツドリンクをひと口飲む。
昨日よりずっと飲みやすい。
「腹減った?」
「少し」
「じゃあ希遥起こす」
「え、まだ寝てるでしょ?」
「起きる時間」
時計を見る。
7時を少し過ぎていた。
「俺、大学行くから」
「今日も?」
「提出」
建築学科らしい一言だった。
「想くんこそ寝不足じゃん」
「慣れてる」
「慣れちゃダメでしょ」
思わず笑うと、想くんもほんの少しだけ口元を緩めた気がした。
ほんの一瞬。
気のせいかもしれないくらい短い笑顔。
でも、その表情を見られただけで、少し得した気分になる。