気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「え?」
マフラーを外し、そのまま私へ差し出してくる。
「貸す」
「いいよ!」
思わず首を横に振る。
「想くんが寒いじゃん」
「俺は平気」
「平気じゃないでしょ」
「家まで10分」
「でも……」
「風邪治ったばっかだろ」
その一言に、返す言葉が詰まる。
「また熱出されたら面倒」
「面倒って……」
「だから使え」
相変わらず素直じゃない。
でも、その言い方が照れ隠しなのは、もう少しだけ分かるようになってきた。
「……ありがとう」
私が受け取ろうと手を伸ばした、その時。
「違う」
「え?」
想くんは私の手を軽く避けると、一歩近付いた。
「動くな」
「……え?」
私は反射的に動きを止める。
想くんは何も言わず、マフラーを私の首へふわりと巻いた。
少しだけ冷えた指先が、首元をかすめる。
思わず肩が跳ねた。
「……!」
最後に形を整えるように軽く引いて、
「よし」
その一言だけ。
「これでいい」