気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -


「……あったかい」


思わず、ぽつりと漏れる。


「そう」

「想くんのマフラーって、すごく暖かいね」

「普通」

「普通じゃないよ」


想くんは小さく肩をすくめる。


「そうか」


それだけ言って、また前を向いた。

しばらくは、お互い何も話さない。

雨上がりの道を歩く音だけが、静かに響く。

吐く息は白く、冷たい風が頬をかすめる。

それでも首元だけは、不思議なくらい暖かかった。


「まだ咳出る?」


不意に、想くんが口を開く。


「ちょっとだけ」

「薬飲んでる?」

「飲んでるよ」

「そうか」


短い返事。

それだけなのに、どこか安心したようにも聞こえた。

また静かな時間が流れる。


不思議だった。

想くんとは、たくさん話すわけじゃない。

気の利いた会話があるわけでもない。

それなのに、この沈黙は嫌じゃない。

むしろ、心地いいと思ってしまう自分がいた


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