気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -


「予算3,000円!」


希遥さんの一言で、リビングは一気に盛り上がった。


「何買おうかな〜!」

「俺、こういうのセンスないんだよな」

「適当なのだけはやめてくださいね?」

「分かってるって」


みんなそれぞれ考え始める。

プレゼント交換。

誰に当たるかは分からない。

だからこそ、選ぶ時間も楽しそうだった。


その日の午後。

私は1人で駅前のショッピングモールへ来ていた。

年末ということもあり、館内は買い物を楽しむ人で賑わっている。


「誰に当たっても喜んでもらえるもの……」


思わず小さく呟く。

希遥さんなら、かわいい雑貨やコスメも似合いそう。

柊弥さんなら、コーヒーや文房具。

想くんなら――。


「……難しい」


思わず苦笑する。

想くんは物欲があまりない。

必要なものは必要になった時、自分で買うタイプだ。

だから、何を渡したら喜ぶのか全然想像がつかない。

……でも。

誰に当たるか分からないんだから、想くんのことばかり考えるわけにはいかない。


「みんなが使えるものがいいよね」

そう考えながら雑貨屋を見て回る。

マグカップ。

ブランケット。

ハンドクリーム。

タンブラー。

どれも素敵だけれど、あと一歩決め手がない。

何軒か歩き回ったあと、一軒の生活雑貨店で足が止まった。

棚には、シンプルなステンレスタンブラーと、冬限定のドリップコーヒー、それに小さなお菓子のセットが並んでいる。


「これ……」


思わず手に取る。

学校へ持って行くこともできるし、家でも使える。

コーヒーが苦手でもタンブラーは使えるし、デザインも落ち着いていて男女問わず使えそうだった。


「これください」


店員さんは赤いリボンを結び、丁寧にラッピングしてくれた。

包装されたプレゼントを受け取ると、不思議と私まで少しわくわくしてくる。

誰に当たるんだろう。

願わくば、このプレゼントを受け取った人が少しでも笑顔になってくれますように。

そう思いながら、私は大切に紙袋を抱え、夕暮れ色に染まった街を家へ向かって歩き始めた。

< 164 / 196 >

この作品をシェア

pagetop