気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
夜7時。
リビングいっぱいに、料理のいい香りが広がっていた。
テーブルの中央には、大きなピザが3枚。
ローストチキン。
ポテト。
サラダ。
スーパーで買ってきたオードブルまで並び、いつもの食卓とは思えないくらい豪華になっている。
「すごーい!」
思わず声が弾む。
「クリスマスっぽい!」
「30日だけどね」
希遥さんが笑う。
「細かいことは気にしなーい!」
「まあ、楽しければいいだろ」
柊弥さんがジュースの入ったコップを並べ始める。
「想、それ取って」
「はい」
想くんが紙皿を配り、私はフォークを並べる。
こうして4人で準備をする時間も、もう当たり前になっていた。
「じゃあ乾杯する?」
希遥さんがオレンジジュースを持ち上げる。
「今年もお疲れ様!」
「クリスマス忘年会!」
「かんぱーい!」
4人のコップが小さく触れ合った。
「いただきます!」
その瞬間、一斉に料理へ手が伸びる。
「このチキンおいしい!」
「ピザまだあるぞ」
「希遥、ポテトばっか食べてる」
「だって好きなんだもん!」
「子どもか」
そんな他愛もない会話に、自然と笑い声が重なる。
春、この家へ来た頃は、こんな時間が待っているなんて思ってもいなかった。
「茉桜、それサラダも食べろ」
「分かってるよ」
「野菜不足」
「想くん、お母さんみたい」
「違う」
「でも言ってることは正しいな」
柊弥さんが笑う。
「この家って、ほんと家族みたいだよね」
希遥さんがぽつりと呟いた。
その言葉に、みんな少しだけ動きを止める。
家族じゃない。
でも。
気付けば、毎日同じ食卓を囲んで、一緒に笑っている。
そんな時間が、今は何より大切だった。