気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「柏木先輩って彼女いる?」
「いや……いないと思うけど……」
「思う?」
「そんなに詳しくないから」
「“昨日”がどうとか、話してたじゃん」
「昨日会うタイミングあったから」
「まさか付き合ってる?」
「いや、ないない」
思わず苦笑いする。
きっとこの2人のどちらか、もしくはその友達が柊弥さんのことが好きなんだろう。
根掘り葉掘り聞かれそう。
圧が凄い…。
どうしようか困っていたその時、この状況を知らない奈瑠が戻ってきた。
「茉桜ーいちごミルク…。誰?」
「あーえっと…」
私が返答に困っていると、「やっぱ大丈夫」と2人はその場を離れていった。
囲まれて解放された後。
「疲れた……」
奈瑠にも状況を説明した。
「だから言ったじゃん」
奈瑠が笑う。
「柏木柊弥は有名人だって」
そうだった。
昨日は普通に話していたけれど、大学での柊弥さんは、私が思っていた以上に遠い存在らしい。
「勘違いされて恨まれるようなことにならないでよ〜」
「勘違いされるようなことは一切ないけどさぁ」
奈瑠はケラケラ笑う。
柊弥さん、モテるんだなぁ。
昔から優しくて頼りになる人だったけど。
大学では、それ以上の存在らしい。
ふと昨日のことを思い出す。
シェアハウスのリビング。
柊弥さんと話す私。
希遥さん。
そして――。
『そんなの、当たり前だろ』
ぶっきらぼうな声が頭に浮かぶ。
思わず顔をしかめた。
……感じ悪い。
柊弥さんみたいに優しく話せばいいのに。
そう思うのに。
なぜか一番印象に残っているのは、あの人だった。