気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「はぁ……」
「想があくびなんて珍しくね?」
「そう?」
「朝は強いイメージ」
「あー……今日はちょっと」
成瀬逸晟。
大学でできた数少ない友達。
入学式でたまたま隣の席になって、気付けば一緒にいるようになっていた。
「なんかあった?」
「昨日から同居人が増えた」
「え!女の子?」
「そうだけど」
「いいじゃん!新しい出会い!」
「別に」
「可愛い?」
「知らん」
「知らんって」
「よく見てない」
「絶対嘘」
「嘘じゃねーし」
逸晟がケラケラ笑う。
陽キャで誰とでも話せる逸晟。
誰とでも仲良くなれる。
俺とは真逆。
……少し羨ましい。
なんて。
絶対言わないけど。
「そういや、その新しい同居人ってどんな子?」
「どんなって?」
「だから、可愛いの?」
「知らん」
「絶対見てるだろ」
「見てない」
「嘘つけ」
くだらない話をしながら歩いていると、前方に見覚えのある後ろ姿が見えた。
友達と話しながら笑っている。
少し跳ねた長い髪。
白いトートバッグ。
……あ。
思わず立ち止まりそうになる。
「あれ、どうした?」
「別に」
あいつはこっちに気付いていない。
楽しそうに笑ってる。
その時。
「あっ」
何もないところで躓いた。
持っていたノートがばさっと落ちた。
「もー茉桜〜」
「ごめんごめん!」
「何にもないのに躓くとか、大丈夫そ?」
友達と笑い合う。
……茉桜。
そういう名前か。
確かに昨日、柊弥たちがそう呼んでいた気もする。
「危な」
思わず声が漏れる。
友達が笑いながら拾っている。
本人も恥ずかしそうに笑っている。
……やっぱり。
危なっかしいやつだ。