気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
決別
「茉桜!」
「奈瑠、おはよう」
「今日寒すぎない?」
「朝、布団から出られなかった」
「分かる!」
そんな何気ない会話。
笑える時間。
前なら、それだけで十分だった。
でも心のどこかには、まだ小さな不安が残っていた。
湊都のこと。
あの日以来、姿を見ることはなかった。
大学にも。
家の近くにも。
だからもう大丈夫なのかもしれない。
そう思い始めていた。
講義が終わり、奈瑠と別れる。
「また明日ね」
「うん、またね」
1人で駅へ向かう。
夕方のキャンパスは、帰宅する学生で賑わっていた。
「……」
ふと足を止める。
嫌な予感。
理由は分からない。
でも背中に視線を感じた。
ゆっくり振り返る。
そこにいた。
「……茉桜」
黒いコート。
見覚えのある顔。
湊都。
「久しぶり」
「……」
前ならこの瞬間、足がすくんでいた。
でも私はゆっくり息を吸った。
「何?」
湊都が少し驚いた顔をする。
「話、聞いてくれるんだ」
「違う」
私は首を振る。
「聞くためじゃない」
「終わらせるため」
その言葉に、湊都の表情が少し変わった。