気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -


春休みになってから、想くんと顔を合わせる時間は少し減った。

建築学科は春休みでも課題が多いらしい。

朝早く家を出て。

夜遅く帰ってくる。

以前なら、

「忙しいんだな」

それだけだった。

でも最近は。

「ちゃんと寝てるのかな」

「ご飯食べてるのかな」

そんなことを考えてしまう。

自分でも不思議だった。


「茉桜ちゃん」

「はい?」


キッチンで洗い物をしていると、希遥さんがじっとこちらを見る。


「最近、想のこと気にしすぎじゃない?」

「え!?」


思わず手を止める。


「そんなこと……」

「あるよ」


即答だった。


「前はさ、想が何してても『また作業してるんだ』くらいだったじゃん」

「……」

「今は帰ってくる時間とか、顔色とか見てる」


言われて、何も返せなかった。


「違う?」

「……分からないです」


正直な気持ちだった。

想くんは大切な人。

それは分かる。

でもそれが恋なのか。

ただ助けてもらったからなのか。

まだ答えが出せない。


「まぁ」


希遥さんは優しく笑った。


「急がなくていいと思うよ」

「恋って気付く時って、案外もっと後だったりするから」


その言葉に、胸が少しだけ揺れた。

その日の夜。


「ただいま」


玄関から声がする。


「おかえり」


自然に返事をしていた。

帰ってきた想くんの顔を見て。

少しだけ安心する。

その瞬間。


「あ」


気付いてしまった。

私は、想くんが帰ってくるのを、待っていた。


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