気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
春休み最後の日。
窓の外を見ると、庭の桜の木に小さな蕾がついていた。
「もうすぐ咲くね」
朝食を食べながら、希遥さんが窓の外を眺める。
「茉桜ちゃんが家にきてもう1年か〜」
「早いよね〜」
柊弥さんが笑う。
桜ノ木ハウスに来て、もう1年が経つ。
最初は知らない人と暮らすことが不安だった。
前の家を出ることも。
新しい環境へ行くことも。
全部怖かった。
でも今では、
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
そんな言葉が当たり前になっている。
帰る場所がある。
待っていてくれる人がいる。
それが、こんなにも温かいものだなんて、あの頃の私は知らなかった。
「茉桜」
「はい?」
柊弥さんが時計を見る。
「今日、予定ある?」
「特にはないです」
「じゃあ」
少し笑う。
「想に付き合ってあげて」
「え?」
その名前に、思わず反応してしまう。
「昨日、珍しく言ってたよ」
「何をですか?」
柊弥さんは少し意味ありげに笑った。
「茉桜、明日暇かな、って」
「……」
胸が小さく跳ねる。
「想くんが?」
自分でも驚くくらい、声が少し弾んでいた。
「あ」
希遥さんがすぐに反応する。
「あ〜!今、嬉しそうだった」
「え!?」
「ほら」
「違います!」
慌てて否定すると、2人が笑う。
「茉桜ちゃん、分かりやすくなったね」
「そんなことないです」
「いや、前よりずっと」