気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -



そう言われて、何も返せなくなる。

前より。

確かにそうかもしれない。

想くんのことを考える時間が増えた。

帰ってくると少し嬉しい。

話せると安心する。

でも。

これが何なのか。

まだ名前をつける勇気はなかった。

その時。


「茉桜」


玄関の方から声がした。

振り返る。

そこには、出かける準備をした想くんが立っていた。


「……行ける?」

「え?」

「少し付き合って」

「どこに?」


想くんは少しだけ視線を逸らす。


「桜。見に行かないか」

一瞬。

意味を理解するのに時間がかかった。


「……桜?」

「うん」

「まだ咲いてないですよ?」

「知ってる」

「じゃあ、なんで」


想くんは少し考えるように黙る。

そして。


「咲く前も、綺麗だから」


その言葉に。

なぜか胸が温かくなった。


「……行きます」


自然と笑顔になる。


「うん」


想くんも、ほんの少しだけ口元を緩めた。

それを見て、また思った。

最近。

想くんの表情が、少しずつ増えている気がする。

そして、その変化を見られることが。

私は、嬉しかった。


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