気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -


帰宅すると、桜ノ木ハウスにはいつもの明るい声が響いていた。


「おかえりー!」


希遥さんがリビングから顔を出す。


「ただいま!」

「どこ行ってたの?」

「公園に」

「公園?」


希遥さんが目を丸くする。


「想と?」

「……はい」


その瞬間。


「やっぱり」

「え?」

「最近の茉桜ちゃん、分かりやすい」

「またですか!?」


思わず声が大きくなる。

キッチンにいた柊弥さんも笑った。


「希遥、あんまりからかうなよ」

「だって〜」


希遥さんは楽しそうに笑う。


「前の茉桜ちゃんだったら、想と2人で出掛けたって聞いたらもっと慌ててたもん」

「……」


否定しようとして。

言葉が止まった。

確かに少し前の私なら、想くんと2人で公園へ行くなんて、考えるだけで緊張していたと思う。

でも今日は、楽しかった。

隣を歩くことも、話すことも。

沈黙さえも。

不思議なくらい自然だった。


「桜、まだ咲いてなかったでしょ?」


柊弥さんが聞く。


「はい」

「でも行ったんだ」

「想くんが」


そこまで言って、少しだけ笑ってしまう。


「咲く前も綺麗だからって」

「……」


一瞬静かになる。


「想が?」


希遥さんが驚いた顔をする。


「はい」

「へぇ……」

「何ですか?」

「いや」


希遥さんは意味ありげに笑った。


「想、変わったね〜」


その言葉に、胸が少し揺れる。

変わった。

確かにそうかもしれない。

でも、きっと私も。


「茉桜」

「はい?」


柊弥さんが優しく笑う。


「楽しかった?」


その問いに、すぐ答えが出た。


「……はい」


自然に笑顔になる。


「楽しかったです」


その瞬間だった。

自分の中で、何かが少しだけ動いた気がした。

想くんといる時間が好き。

話すのが好き。

笑っている顔を見るのが好き。

でも、まだその気持ちに名前を付けるのは怖かった。



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