気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
数日後。
庭の桜が満開になった。
「綺麗……」
窓の外を見ながら、私は呟く。
初めてこの家に来た時。
私は何も持っていなかった。
知らない場所。
知らない人たち。
終わった恋。
もう誰かを好きになることなんてないと思っていた。
でも。
「茉桜」
振り返る。
「朝ごはん」
「今行く」
いつもの声。
いつもの呼び方。
それだけなのに。
胸の奥が温かくなる。
リビングへ向かうと。
「茉桜ちゃん遅い!」
「寝坊?」
「してません!」
「想、待ってたよ」
「……別に」
いつもの会話。
いつもの笑い声。
半年前。
この家の扉を開けた時の私は知らなかった。
ここが、帰りたいと思える場所になること。
誰かの「おかえり」が嬉しいと思えること。
そして。
「茉桜」
「ん?」
隣にいる人を。
こんなにも大切に思えること。
窓の外を見る。
満開の桜。
この木の下で始まった新しい生活。
傷付いた過去も。
迷った時間も。
全部、今に繋がっていた。
気付けば、私の隣には。
大切な人がいた。
桜ノ木ハウス。
ここは、私がもう一度、恋を見つけた場所。
そして。
私が、幸せを見つけた場所。
気付けば、隣にいた。