気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「また断られた!」
「予定ある?」
「ない」
「ないの!?」
逸晟が横で吹き出した。
「じゃあなんで断るんだよ!」
「なんとなく」
「意味分かんない!」
「人多いの苦手」
「あー……」
女子2人は顔を見合わせる。
「じゃあ仕方ないか」
「また誘うね!」
ひらひら手を振って去っていった。
逸晟は呆れたように俺を見る。
「お前さ」
「何」
「普通にモテるのに」
「そうか?」
「そうだよ」
「まぁ、想らしいかぁ」
別に。
誰かと付き合いたいとも思わない。
恋愛したいとも思わない。
人と近くなるのは苦手だ。
期待されるのも。
期待するのも。
面倒だから。
「もったいねー」
「逸晟が頑張れ」
「俺は頑張ってる!」
「知ってる」
そう言うと、逸晟は「なんだそれ」と笑った。
笑いながら歩いていると、ふとさっきの光景が頭をよぎる。
何もないところで躓いて。
友達に笑われて。
自分でも笑っていた、あいつ。
……茉桜、か。
「ん?」
「いや」
なんでもない。
そう思ったのに。
頭の片隅に、その名前だけが残っていた。