気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -



俺は床にしゃがみ込んで、散らばった板を確認する。


「説明書は?」

「……飛んだ」

「飛んだ?」

「風で」

「なんで外で組み立ててんの」

「部屋だと狭いかなって」


説明書なしで作って、こうなったわけか。

納得だ。

朝、トーストを焦がして。

大学では何もないところで躓いて。

今度は説明書を飛ばした。

……そういうやつなんだろう。


「ちょっと貸して」

「え?」

「やってやる」


どうせまた茉桜がやったって、壊れるだけだ。

運良く組み立てても、物を乗せた時に崩れて、隣の部屋からまた悲鳴が聞こえるのは勘弁して欲しい。


「へぇ〜」

「すご」

「え、そこそうなるの?」

「だから壊れちゃったんだ〜」

「静かにして」

「はい……」


しゅんとする。

……なんだその顔、子どもみたいだ。

数分後。


「できた」

「え!!すご!!」


茉桜がぱっと顔を上げる。

嬉しそうに笑う。

朝も思ったけど、よく笑うやつだ。


「ありがとう!」

「別に」

「お礼にアイスあげる!」

「いらない」

「なんで!?」

「甘いの嫌い」

「人生損してる!」


意味分かんね。

そう言って立ち上がる。

部屋に戻ろうとして、ふと振り返る。

さっきまで散らかっていたテラスには、無事、組み立て終わった本棚。

その前で、嬉しそうに眺めている茉桜。


「できてよかった〜!」


嬉しそうな声が、夕方のテラスに響く。

……また騒がしくなりそうだ。

静かな方が好き、そう思っていたはずなのに。

少しならそういう毎日も悪くないかもしれない、なんて。

――いや。

ないな。

俺は小さく首を振って、自分の部屋へ戻った。

< 26 / 196 >

この作品をシェア

pagetop