気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
俺は床にしゃがみ込んで、散らばった板を確認する。
「説明書は?」
「……飛んだ」
「飛んだ?」
「風で」
「なんで外で組み立ててんの」
「部屋だと狭いかなって」
説明書なしで作って、こうなったわけか。
納得だ。
朝、トーストを焦がして。
大学では何もないところで躓いて。
今度は説明書を飛ばした。
……そういうやつなんだろう。
「ちょっと貸して」
「え?」
「やってやる」
どうせまた茉桜がやったって、壊れるだけだ。
運良く組み立てても、物を乗せた時に崩れて、隣の部屋からまた悲鳴が聞こえるのは勘弁して欲しい。
「へぇ〜」
「すご」
「え、そこそうなるの?」
「だから壊れちゃったんだ〜」
「静かにして」
「はい……」
しゅんとする。
……なんだその顔、子どもみたいだ。
数分後。
「できた」
「え!!すご!!」
茉桜がぱっと顔を上げる。
嬉しそうに笑う。
朝も思ったけど、よく笑うやつだ。
「ありがとう!」
「別に」
「お礼にアイスあげる!」
「いらない」
「なんで!?」
「甘いの嫌い」
「人生損してる!」
意味分かんね。
そう言って立ち上がる。
部屋に戻ろうとして、ふと振り返る。
さっきまで散らかっていたテラスには、無事、組み立て終わった本棚。
その前で、嬉しそうに眺めている茉桜。
「できてよかった〜!」
嬉しそうな声が、夕方のテラスに響く。
……また騒がしくなりそうだ。
静かな方が好き、そう思っていたはずなのに。
少しならそういう毎日も悪くないかもしれない、なんて。
――いや。
ないな。
俺は小さく首を振って、自分の部屋へ戻った。