気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
2.今日も、桜ノ木ハウスで。
朝は戦場
「うわっ!」
「きゃっ!」
「危な」
朝7時。
洗面所前。
歯ブラシを咥えたまま振り返った私は、後ろから出てきた想くんとぶつかりそうになった。
「びっくりした〜!」
「朝からうるさい」
むすっとしながら歯を磨く。
桜ノ木ハウスの朝は早い。
希遥さんは8時から授業。
柊弥さんはゼミ。
私は1限。
想くんは……、今日はバイトだったかな。
つまり。
洗面所。
トイレ。
キッチン。
つまり、全部混む。
引っ越してから1週間。
少しずつ、この家の生活リズムが分かってきた。
想くんは、朝が強い。
私より早く起きていることが多いけど、無口だからいるのかいないのか分からない。
柊弥さんは、私と似た生活リズム。
朝ごはんを食べながらニュースを見るのが日課らしい。
希遥さんは――
「あと5分……」
と言いながら、
毎朝ギリギリに起きてくる。
なのに。
「間に合う間に合う!」
本当に間に合うからすごい。
「茉桜、ドライヤー貸して〜」
「どうぞ!」
希遥さんが私の後ろから手を伸ばす。
その瞬間。
「熱っ!」
「きゃ!」
「危な!」
コードが足に引っかかり、ドライヤーが飛ぶ。
落ちる――
と思った瞬間。
ガシッ。
想くんが片手でキャッチした。
「…………」
「…………」
「危なすぎ」
「す、すみません……」
希遥さんが吹き出す。
「想、茉桜ちゃんの保護者じゃん」
「違う」
「先週も本棚作ってあげてたし」
「違う」
「優しい〜」
「違う」
全部否定。
なんなんだ、この人。
優しいのか冷たいのか、
ほんとによく分からない。