気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -


そう言った数秒後。

芸人さんが、思いっきり転ぶ。

想くん。


「……っ」


笑った、ほんの少し。


「今笑った!!」

「笑ってない」

「笑った!」

「気のせい」

「絶対笑った!!」


私は見逃さなかった。

想くんが笑うところを初めて見た。

嬉しくって思わず指摘したけど、

想くん、少し嫌そう。

でも、否定しながら、テレビから目は離さない。


「茉桜ちゃんポテチ食べる?」

「食べます!」

「想は?」

「いらない」

「はい」

「……なんで」


いらないと言った想くんに、希遥さんが無理やりポテチを渡す。


「ほーら、食べてるじゃん!」

「もらったから」

「素直じゃない〜!」


希遥さんが笑う。

それを見た柊弥さんも笑う。

思わず私も笑っちゃう。

想くんだけ少し呆れ顔。


一人暮らしだった頃。

ご飯も、テレビも、笑うのも、全部1人だった。

誰かと一緒にテレビを見るなんて、いつぶりだろう。

騒がしくて。

少しうるさくて。

でも。

悪くない。

私はポテチを1枚食べながら、

隣でぶつぶつ言っている想くんを横目で見た。

やっぱり、感じ悪い。

でも。

この家に来てよかったって、この瞬間、少しだけ思った。


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