気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -


その日の夜。

プリン事件から数時間後。

希遥さんがまたプリンを買いに行っている。


「ただいまー!買ってきた!」

「早」

「反省したから!」


見ると、今度は油性ペンで、でかでかと


【西條希遥】

【絶対食べるな】

【食べたら呪う】


と書いてある。


「圧が凄い」

「誰も食わねーよ」

「食べない?」

「食べない」

「絶対?」

「絶対」




「……じゃあ半分食べる?」

「なんでだよ」


想くん、即ツッコミ。

希遥はそんな想くんの姿に爆笑している。


そこへ、柊弥さんが冷蔵庫を開ける。


「これ食べていい?」

「ダメーーーー!!!!」


リビングにまた悲鳴が響く。


「希遥って書いてあるじゃん」

「だから!名前書いてあるから!」

「食べちゃダメなの!!」



「え?」


柊弥さん、天然炸裂。


「こっちが、え?なんだけど。柊弥ってたまにズレてるよね」


と希遥さん。


「たまにじゃない」


想くん。


「想ひど」


頭を掻きながら、少し口を尖らせる柊弥さん。



私は、少し離れたテラス側のソファから3人を眺める。

少し前まで、私はこの家のことを何も知らなかった。

1人でご飯を食べて、1人でテレビを見て、1人で寝る。

それが普通だった。

でも今は、くだらないことで笑って、プリン一つで騒いで、夜になると、「おやすみ」って言い合う人がいる。


「茉桜ちゃん、なに笑ってんの?」


希遥さんに言われて、私は慌てて首を振った。


「なんでもないです!」


本当は、なんでもなくなんかない。

この家が、少しずつ好きになっている。

そんなこと、まだ恥ずかしくて言えないけど。

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