気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「…帰ってきたか」
「なにその反応〜、今嬉しそうに「姉ちゃん!」って言ったくせに」
「昨日まで普通にLINEしてたし」
「思春期ですね〜」
「で、お土産は?」
お母さんが笑う。
茉尋は7歳下の弟。
生まれた頃からずっと面倒を見てきたから、茉尋はママっ子、パパっ子というより、姉ちゃんっ子だった。
小さい頃は、
「ねぇね!」「姉ちゃん!」
って、いつも後ろをついてきていたのに。
最近はそういうのが恥ずかしいみたいで、自分から甘えてくることはほとんどない。
中学1年生。
絶賛、思春期と反抗期の真っ最中だ。
久しぶりの我が家。
テレビの音。
お味噌汁の匂い。
当たり前だったものが、少しだけ懐かしく感じた。
安心する。
安心する、はずなのに。
夕飯の時。
「シェアハウス、どう?」
とお父さんにそう聞かれて、私は、
「希遥さんってね、すごくかっこいいのに抜けてて可愛くて」
「柊弥さんは昔から優しくてモテたけど、大学でもめちゃくちゃモテてて!」
気付けば、桜ノ木ハウスの話ばかりしていた。
お母さんが笑う。
「楽しそうね」
「そう?」
「シェアハウス、羨ましい。友達と一緒に住めるんでしょ?」
「元々知り合いだったのは柊弥さんだけだったから、はじめは緊張したけどね」
「いいなー。俺も大学生になったらシェアハウスしたい」
「茉尋はます大学生になれるように勉強頑張りなさい」
お父さんに痛いところを突かれて、茉尋は「うっ」と言葉を詰まらせる。
それを見て、みんなが笑った。