気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「……久しぶり」
そう言ったのは、私だったかもしれないし、湊都だったかもしれない。
頭が真っ白で、よく覚えていない。
半年ぶりに見た湊都は、少しだけ髪が伸びていて。
相変わらず、かっこよかった。
だから余計に、嫌だった。
「元気?」
「うん」
「大学どう?」
「普通」
「そっか」
会話が続かない。
「俺ら東京にいんのに全然会わないよな」
「そう、だね」
昔は、何時間でも話せたのに。
沈黙がこんなに苦しいなんて。
「横浜帰ってたんだ」
「ゴールデンウィークだから」
「そっか」
また、沈黙。
ホームに電車が入ってくるアナウンスが流れる。
少しだけ安心した。
早く帰りたい。
「茉桜さ」
名前を呼ばれて、顔を上げる。
「なんか、前より元気そう」
……何それ。
思わず眉をひそめそうになる。
でも、ぐっと堪えた。
前より元気そう。
そう見えるなら、それは、誰のせいで前の私は元気じゃなかったと思ってるんだろう。
言いたかった。
でも、言わなかった。
「そう?」
代わりに、それだけ返す。
湊都は少し笑った。
「うん」
「よかった」
昔だったら、その笑顔を見ただけで嬉しくなっていた。
でも今は。
……ああ。
私、この人のこと。
もう好きじゃないんだ。
はっきりそう思った。