気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
電車がホームに入ってくる。
風が吹く。
「じゃあね」
私が言う。
「うん」
湊都が頷く。
「また」
また?
その言葉に、少しだけ違和感を覚えた。
また会いたい、とか。
また話したい、とか。
そういう気持ちは、もうどこにもない。
「……じゃあね」
そう言って、電車に乗り込む。
ドアが閉まる。
窓越しに見えた湊都は、
まだホームに立っていた。
私を見ている。
その視線が、少しだけ気持ち悪かった。
電車が動き出す。
私は窓の外から目を逸らして、スマホを開く。
桜ノ木ハウスのグループLINE。
【柊弥】『茉桜〜!明日何時に帰ってくる!?』
【希遥】『お土産忘れないでね笑』
【想】『うるさい』
思わず笑ってしまった。
帰ろう。
横浜も好き。
家族も好き。
でも。
私には、帰りたい場所がもう1つある。
窓の外、遠ざかっていく横浜の夜景を見ながら、私は少しだけ、帰るのが楽しみになっていた。