気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
ただいま
帰省を終え、桜ノ木ハウスに戻ってきた。
玄関を開けた瞬間、カレーの匂いが漂ってきた。
聞こえてくるのは、リビングで笑う希遥さんの声。
テレビの音。
「あ、帰ってきたー!」
「おかえり、茉桜」
「ただいま!」
帰ってきたんだなあ、と胸の奥がじんわり温かくなる。
このゴールデンウィークは、少し――いや、かなり嫌な気持ちになった日もあった。
でも、家族と過ごして。
友達と笑って。
久しぶりに地元の空気を吸って。
やっぱり横浜は好きだな、って思った。
だけど。
東京のこの家で過ごす毎日も、同じくらい好きになっていた。
希遥さんと想くんの口喧嘩。
それを見て笑う柊弥さん。
まだ一緒に暮らし始めて1ヶ月も経っていない。
4日家を空けただけなのに、全部が少し懐かしく感じる。
「茉桜ちゃん!」
「はい!」
「お土産は?」
「希遥、それしか考えてなくね?」
「昨日もLINEで言ってたもんね」
「出発の時もな」
想くん、覚えてたんだ。
少しだけ驚く。
「希遥さん、ちゃーんと買ってきましたよ」
紙袋を持ち上げると、
「茉桜ちゃん最高!」
希遥さんが飛びついてきた。
「重い重い!」
「なに買ってきてくれたの!?」
「クッキーと、ラスクと、あと限定のプリン!」
「プリン!!!」
その瞬間。
「名前書いとけよ」
想くんがぼそっと言う。
……あ。
「「プリン事件」」
柊弥さんと私の声が揃った。
「もう言うなって〜!!」
希遥さんが頭を抱える。
柊弥さんは思い出したように笑ってるし、想くんは呆れた顔。
私も思わず笑ってしまった。
うん。
やっぱり。
私は、この家が好きだ。