気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「茉桜ちゃん、限定プリンって何味?」
「塩キャラメルです」
「絶対美味しいやつ!」
「食べる?」
「食べる!」
「名前書いとけよ」
「もう!!」
プリン事件を思い出して、私と希遥さんが同時に抗議する。
「想くん、いつまで言うの!」
「お前らが忘れるまで」
「一生言うじゃん」
「そうだな」
少しだけ口元が笑っている。
……あれ。
「想、ちょっと機嫌良くない?」
「普通」
「いや絶対」
「想、みんなの帰省中、静かすぎて寂しかったんじゃない?」
「は?」
希遥さんがにやにやする。
「違う」
「え〜?絶対寂しかったって」
「静かなの好きなんじゃなかったの?」
「好きだけど」
「ほら!」
「希遥がいないと物がなくなったって騒がしくなくていい」
「ひどくない!?」
私と柊弥さんが笑う。
「でもそれがいいんでしょ?」
「……別に」
「ほら、否定しない!」
「うるさい」
想くんがため息をつく。
想くんがため息をつく。
でも、いつもみたいに部屋には戻らない。
テレビを見ながら、私たちの会話を聞いている。
……なんか。
少しだけ、家族みたい。
帰省中。
実家のリビングも好きだった。
茉尋や両親と他愛もない話をする時間。
でも、今こうして、カレーの匂いのするリビングで、過ごしている時間も、同じくらい好きだ。
帰る場所って、1つじゃなくてもいいのかもしれない。
そう思いながら、私は塩キャラメルプリンの箱を抱きしめた。
今度こそ、名前を書き忘れないようにしようと思う。