気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -


「……どけ」

「…はいはい」


想くんが洗濯物を取り出す。

白いシャツ。

黒いTシャツ。

グレーのパーカー。

全部、

ぴしっと伸ばして、

ぱん、と一回シワを伸ばしてから、

洗濯かごに入れていく。

几帳面。

見ていて気持ちいいくらい。


想くん。

普通に「茉桜」って呼んだ?

一瞬、頭の中で巻き戻す。


「弟と似てそう、茉桜」


呼んでる、絶対呼んでる。

今までずっと、「お前」とか、「あんた」とか、名前で呼ばれたことなんてなかったのに。


「何ぼーっとしてんの?」

「あ、いや、別に」

「変なやつ」

「ねぇ想くん」

「あ?」

「今、名前」

「茉桜邪魔」

「また言った!!」

「どけ」

「今呼んだ!」

「うるさい」

「想くんが!」

「洗濯物飛ばすぞ」

「最低!」


想くんは顔色ひとつ変えず、洗濯機から洗濯物を取り出していく。

でも。耳が。

少しだけ赤い。

……え。

気のせい?

思わずじっと見つめると、


「見るな」


と言われた。

絶対、気のせいじゃない。

照れてる?

想くんが?

そんなことを思ったら、

なんだか少しおかしくなってしまう。

普段、何を考えているのか分からない人。

いつもぶっきらぼうで、「うるさい」とか「邪魔」とかばっかり言うのに。

こんな顔もするんだ。

私は洗濯かごを抱えたまま、1人でにやにやしてしまった。


「……気持ち悪」

「なんで!?」

「顔」

「失礼!」

「洗濯しろ」

「しますー!」


窓の外は、雲ひとつない青空。

洗濯物も、なんだか今日はいつもより、ふわふわに乾きそうな気がした。

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