気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
少しすると、階段を駆け上がる足音が聞こえてくる。
隣の部屋の扉が開き、テラスから声が聞こえた。
「気持ち〜い!」
洗濯が終わったのだろう。
茉桜の部屋の方から、鼻歌が聞こえてくる。
多分、最近流行っているアイドルの歌。
音程は合っているような、いないような。
「……うるさい」
誰に聞かせるでもなく呟く。
けれど、その声が届くはずもなく。
「今日は絶対乾く〜!」
なんて声が続いて聞こえてくる。
平日の朝。
大学もバイトもない休日。
窓を開ければ風が通る。
洗いたてのタオルが揺れている。
静かで、穏やかで、いつもなら嫌いじゃない時間。
でも今日は、隣から聞こえてくる鼻歌のせいで、少しだけ賑やかだった。
「想くーん!」
突然呼ばれる。
返事をしなくても、どうせまた何かだろう。
「なに」
テラス越しで会話をする。
「シーツと毛布ってどこに干せばいい?」
「物干し竿」
「それは分かる」
「じゃあ聞くな」
「スペース足りないの!」
「下のテラスに干せばいいだろ」
「あぁ、そっか」
思わずため息が出る。
洗濯物くらい、一人で干せると思ったのに。