気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
その時。
「あれ?」
逸晟くんが窓の外を見る。
「雨、弱くなってね?」
私も外を見る。
さっきまで激しくガラスを叩いていた雨が、いつの間にか小降りになっていた。
空はまだ暗いけれど、さっきみたいな豪雨じゃない。
「ほんとだ」
「どうする?」
逸晟くんが聞く。
私は少し考えてから、買ったばかりのビニール傘を見た。
「帰ろうかな」
「それがいいと思う」
想くんが言う。
「また降るかもしれないし」
「確かに」
外に出ると、雨の匂いがした。
アスファルトが濡れた時の、少しだけ懐かしい匂い。
「じゃあ、また家で」
「ん」
「茉桜ちゃん、またねー!」
逸晟くんが大きく手を振る。
私は傘を開いて歩き出した。
大学では知らなかった想くんの話。
でも、知らないことよりも、分かったことの方が多かった気がする。
家でも。
大学でも。
想くんは、想くんだった。
雨粒が傘を叩く音を聞きながら、私は少しだけ笑った。