気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「建築の女子とか結構想のこと好きだと思うけどな」
「やめろ」
「なんで?」
「面倒だから」
「ほらこういうところ。分かるでしょ?」
「分かります」
その様子にみんなが笑った。
私は少しだけ不思議な気持ちになる。
大学で見るみんなは、私の知らない顔を持っている。
柊弥さんはたくさんの人に囲まれていて。
希遥さんは後輩たちから頼られていて。
想くんにも、大学で一緒に笑い合う友達がいる。
でも、桜ノ木ハウスに帰れば、プリンを巡って言い合いをして、洗濯ネットの使い方で怒られて、テレビを見ながらくだらないことで盛り上がる。
きっと大学の人たちは知らない。
そんなみんなの姿を。
「茉桜ちゃん?」
希遥さんに呼ばれて顔を上げる。
「何考えてたの?」
私は少しだけ笑った。
「みんな、家と大学で全然違うなって」
「あー」
希遥さんが納得したように頷く。
「そりゃそうでしょ」
「そういうもの?」
「そういうもの」
柊弥さんも笑う。
私はみんなの顔を見る。
大学で見る顔。
家で見る顔。
そのどちらも知っている。
それはきっと、同じ家に暮らしているからだ。
初めてこの家に来た時は、不安の方が大きかった。
でも今は、知らなかった人たちのことを、少しずつ知っていく毎日が、案外好きだった。