気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「弟が来たいらしいんだけど」
「弟?」
「ゴールデンウィークの時にシェアハウス見てみたいって言ってて」
「あー」
想くんは冷蔵庫から麦茶を取り出す。
「夏休みだから東京来たいんだって」
「へぇ」
「数日泊まってもいいかなって」
「別にいいんじゃね」
即答だった。
「え?」
思わず変な声が出る。
「何」
「いや、もっと嫌そうな顔するかと思って」
「なんで」
「なんとなく」
「失礼だな」
想くんは麦茶をコップに注ぐ。
「中学生だろ?」
「うん」
「なら別に」
それだけだった。
もっと何か条件を出されるかと思ったのに。
「ほらね」
希遥さんが得意げな顔をする。
「だから言ったじゃん」
「でも想くんだし」
「どういう意味だよ」
「怖そうだから」
「怖くねえよ」
「怖いよ」
「怖くない」
「怖いです」
「お前な」
想くんがため息をつく。
でも、本気で怒っているわけじゃない。
その証拠に、部屋へ戻る気配もなく、そのままリビングの椅子に座った。
「いつ来るんだ?」
「来週くらいかな?聞いてみるよ」
「ふーん」
興味があるのかないのか分からない返事。
すると希遥さんが急に笑った。
「弟くん、想見たら緊張しそう」
「それな」
「なんでだよ」
「だって想、初対面だと怖いもん」
「否定できないです」
「お前もか」
想くんはまたため息をついた。
今日だけで何回目だろう。
でも、茉尋が来ることを、誰も嫌がらなかったのが少し嬉しかった。
私はスマホを手に取る。
【来てもいいって】
送信して数秒後。
【よっしゃ】
【観光もしたい】
【案内して】
と返信が来た。
絶対、今ガッツポーズしてる。