気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -


「弟が来たいらしいんだけど」

「弟?」

「ゴールデンウィークの時にシェアハウス見てみたいって言ってて」

「あー」


想くんは冷蔵庫から麦茶を取り出す。

「夏休みだから東京来たいんだって」

「へぇ」

「数日泊まってもいいかなって」

「別にいいんじゃね」


即答だった。


「え?」


思わず変な声が出る。


「何」

「いや、もっと嫌そうな顔するかと思って」

「なんで」

「なんとなく」

「失礼だな」


想くんは麦茶をコップに注ぐ。


「中学生だろ?」

「うん」

「なら別に」


それだけだった。


もっと何か条件を出されるかと思ったのに。


「ほらね」


希遥さんが得意げな顔をする。


「だから言ったじゃん」

「でも想くんだし」

「どういう意味だよ」

「怖そうだから」

「怖くねえよ」

「怖いよ」

「怖くない」

「怖いです」

「お前な」


想くんがため息をつく。

でも、本気で怒っているわけじゃない。

その証拠に、部屋へ戻る気配もなく、そのままリビングの椅子に座った。


「いつ来るんだ?」

「来週くらいかな?聞いてみるよ」

「ふーん」


興味があるのかないのか分からない返事。

すると希遥さんが急に笑った。


「弟くん、想見たら緊張しそう」

「それな」

「なんでだよ」

「だって想、初対面だと怖いもん」

「否定できないです」

「お前もか」


想くんはまたため息をついた。

今日だけで何回目だろう。

でも、茉尋が来ることを、誰も嫌がらなかったのが少し嬉しかった。

私はスマホを手に取る。


【来てもいいって】


送信して数秒後。


【よっしゃ】

【観光もしたい】

【案内して】


と返信が来た。

絶対、今ガッツポーズしてる。

< 76 / 196 >

この作品をシェア

pagetop