気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -

賑やかな夏の始まり



「あ」


夏休みに入って、いつも以上に混み合う東京駅。

その中で見覚えのある顔を見つけた。

黒いリュックと小さなキャリーケース。

少し伸びた髪。

キョロキョロと不安そうに周りを見る、昔と変わらないあの表情。


「茉尋!」


私が手を振る。

すると茉尋もこちらに気付いたらしい。


「姉ちゃん!」


そう言いながら近付いてくる。

安心したのか、少し表情が緩んでいた。


なんだろう。


「大きくなったね!?」


思わずそう言ってしまった。


「3ヶ月しか経ってないけど」

「いや、なんか大きい!」

「気のせい」


気のせいじゃない。

肩幅も広くなっている気がする。


「茉尋!」


今度は柊弥さん。


「柊弥くん?」

「久しぶり!」

「柊弥くん元気そうじゃん」


茉尋が少し笑う。


「うわ、その言い方」

「なに?」

「小学生じゃなくなってる」

「意味分かんない」


そう言いながらも、少し照れている。


「荷物それだけ?」

「7泊分」

「それにしては少なく見えるけど」


私が驚くと、茉尋は肩をすくめた。


「姉ちゃんが旅行の時荷物多すぎるだけ」

「失礼だなぁ」


久しぶりに会った茉尋は、ちゃんと茉尋だった。

でも、少しだけ知らない部分も増えている気がする。

春に会った時より声も少し低くなったような気がした。


「じゃ、行くか」


柊弥さんがそう言う。


「桜ノ木ハウスへようこそ」

「まだ着いてないじゃん」

「細かいこと気にしない」

「気にするでしょ普通」


そのやり取りに思わず笑う。

茉尋がきた。

たった1週間。

でもきっと、賑やかな数日になる。


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