気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
電車に揺られながら、窓の外を流れる景色を眺める。
高いビルが増えていく。
茉尋は珍しそうに外を見たり、スマホで路線図を見たり、落ち着かない様子だった。
「東京ってやっぱ人多い」
「平日の朝だからね」
「横浜も多いけど、なんか違う」
「慣れるよ」
「いや、慣れたくはないかも」
そんなことを言いながら笑う。
少し見ない間に大人っぽくなったと思ったけど、こういうところはまだ中学生だ。
「そういえば」
茉尋が私を見る。
「シェアハウスのみんなって今日いるの?」
「いると思うよ」
「会える?」
「うん」
「楽しみだな」
素直な一言だった。
「希遥さんは、姉ちゃんが言ってた通り面白い人?」
「うん、面白い」
「柊弥くんは?」
「昔と全然変わらない、こんな感じ」
「こんな感じって、説明雑じゃない?」
「ふーん」
少し間が空く。
そして。
「想くんは?」
やっぱり、その名前が出た。
「怖い?」
私は思わず笑ってしまう。
「第一印象はちょっと怖いかも」
「やっぱり」
「でもね」
私は少しだけ考えてから続けた。
「本当は優しいよ」
「へぇ」
「ただ、口が悪い」
「怖いじゃん」
「それは否定できない」
隣で柊弥さんが吹き出した。
「想が聞いたら怒るぞ」
「本当のことですもん」
「姉ちゃんの話聞いてると、よく分かんない人だな」
「私も最初そう思った」
家で一緒に暮らしていなかったら、きっと今もそう思っていた。
無愛想で、近寄りがたくて、何を考えているのか分からない人。
でも今は違う。
洗濯が好きで、面倒見がよくて、少しだけ照れ屋。
そんな想くんを、茉尋はどんな人だと思うんだろう。
きっと第一印象は、「怖い人」。
……でも、それだけじゃないことを、私はもう知っている。
電車はゆっくりと、桜ノ木ハウスの最寄り駅へ近付いていった。