気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
20分後。
玄関の扉が開く音がした。
「ただいま」
低く落ち着いた声。
茉尋がぴくっと反応する。
「あ、帰ってきた」
私がそう言うと、希遥さんがにやりと笑った。
「噂の人だよ」
数秒後、リビングの扉が開く。
片手にはコンビニの袋、もう片方の肩には黒いリュック。
汗で少し前髪が乱れていて、暑そうに首元を軽く引っ張っている。
想くんは部屋の中を見回して、すぐに見慣れない顔へ視線を止めた。
「……誰」
第一声、それ。
「弟」
私が答える。
「真田茉尋です」
茉尋は立ち上がって、少し緊張しながら頭を下げた。
「……西澤、想」
それだけ言って、想くんも軽く会釈する。
「姉がお世話になってます」
茉尋がそう言うと、
「別に」
想くんは短く返した。
「ちょっと想!」
「え?」
「もっと何かあるでしょ!」
「何が」
「初対面なんだから!」
希遥さんが横から口を挟む。
想くんは少しだけ考えて、
「……よろしく」
と、小さく付け足した。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
茉尋はほっとしたように笑う。
その様子を見て、私も少し安心した。
思っていたより、ずっと普通だった。
……いや、普通というより。
想くんなりに気を遣ってくれたんだと思う。