気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「姉ちゃん、いいところ来たね」
その一言に、私は少しだけ目を丸くした。
「そうかな?」
「うん」
茉尋は迷いなく頷く。
「みんな姉ちゃんのこと、ちゃんと家族みたいに接してる。」
「……家族、か」
「うん」
私は天井を見上げる。
春にここへ来たばかりの頃は、知らない人と暮らすことが不安で仕方なかった。
それなのに今は、この家に帰るのが当たり前になっている。
「羨ましいもん」
茉尋がぽつりと言った。
「え?」
「俺も大学生になったら、こんな家に住んでみたい」
「でもさ」
「ん?」
「毎日プリン事件が起きるかもしれないよ?」
「それは嫌かも」
「お風呂も30分まで」
「守ってない人いるじゃん」
「よく知ってるね」
また笑う。
しばらく笑ったあと、茉尋が小さく呟いた。
「……でも、本当にいい家だね」
その声は、もう眠たそうだった。
私は部屋の明かりを消す。
「うん」
暗闇の中で、小さく返事をする。
私も、そう思う。