気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
リビングの奥で椅子が引かれる音がした。
想くんは何も言わず窓際へ向かった。
カーテンを少しだけ開ける。
「外も消えてる」
カーテンを少し開けた想くんが、外を見ながら言う。
私も窓の外を見る。
街灯も。
向かいの家も。
信号機まで消えている。
「ほんとだ……」
「ブレーカーじゃないな」
「じゃあ停電?」
「たぶん」
柊弥さんがスマホを取り出す。
「一応、停電情報見てみる。みんな怪我してない?」
「俺、懐中電灯持ってくる」
そう言って想くんは暗い廊下へ向かっていった。
「え、真っ暗なのに行くの!?」
「家の中だから」
「すご……」
私は思わず呟く。
停電した途端、慌てる人。
状況を確認する人。
必要なものを取りに動く人。
同じ出来事なのに、みんな反応は全然違う。
でも。
誰かが慌てれば、誰かが落ち着かせて。
誰かが困れば、誰かが動く。
そんな当たり前みたいなことが、この家では自然にできていた。
「茉尋、大丈夫?昔、雷苦手だったじゃん」
「……大丈夫」
そう言いながらも、茉尋はいつの間にか私の隣まで来ていた。
普段なら照れくさそうに距離を取るのに、こういう時だけは昔のまま。
本人は気付いていないんだろうけど、その距離が少しだけ可愛くて、私は小さく笑った。