気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
想くんが懐中電灯を持って戻ってきた。
「これ使え」
テーブルの真ん中に置かれた光で、リビングがぼんやり明るくなる。
「うわぁ、ちょっと安心する……」
希遥さんがほっと息をつく。
「スマホのライトは必要な時だけ使って」
想くんが短く言う。
「どうして?」
「充電減るから」
「あ、そっか」
「停電長引いたら困るだろ」
言われてみればその通りだ。
私はすぐにライトを消した。
柊弥さんも頷く。
「モバイルバッテリーある人?」
「あります」
「俺もある」
「私も!」
「じゃあ大丈夫そうだね」
柊弥さんはみんなの顔を見回す。
「飲み物欲しい人いる?」
「いる!」
希遥さんが真っ先に手を挙げた。
「冷蔵庫は?」
私が聞くと、
「開けない方がいい」
想くんが即答する。
「冷気逃げる」
「なるほど……」
「飲み物はあとでいい」
希遥さんは少し残念そうな顔をしたけれど、
「分かった……」
と素直に頷いた。
その時だった。
ゴロゴロ……
また大きな雷。
「きゃっ!」
希遥さんがまた肩を震わせる。
「大丈夫ですか?」
「む、無理……」
「希遥さん、ソファ座りましょう」
私は希遥さんの隣に座る。
反対側では、いつの間にか茉尋も私のすぐ近くにいた。
「茉尋、大丈夫?」
「……大丈夫」
そう言いながら、さっきより少しだけ私との距離が近い。
本人は気付いていないんだろうけど、雷が鳴るたびに少しだけ肩が跳ねる。
やっぱり昔と変わっていない。
「……2人とも雷苦手なんだな」
柊弥さんが苦笑する。
「茉尋くんも?」
「別に」
強がっているけど、その返事に説得力はない。
想くんはそんなやり取りを横目に見ながら、窓の鍵を確認して回っていた。
誰かを励ますわけでもなく。
大丈夫だと言うわけでもなく。
ただ、今やるべきことを淡々と済ませていく。
その姿が、なんだか想くんらしかった。