気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「……あぁぁ!!」
停電してから20分。
電気はまだ戻らない。
家の中も、窓の外も真っ暗なまま。
そんな静かなリビングに、突然希遥さんの大きな声が響いた。
びっくりして、隣にいた茉尋の肩がぴくっと跳ねる。
「どうしたんですか!?」
「……アイス」
「え?」
「想が買ってきてくれたアイス!」
「アイスがどうしたんですか?」
柊弥さんと私は顔を見合わせる。
でも、想くんだけはすぐに察したらしい。
「希遥、お前さ」
「……」
「まさかとは思うけど」
「アイス溶けちゃうよ!」
「やっぱり」
想くんが小さくため息をつく。
「あと5個残ってるの!」
「雷と停電には誰よりビビってたのに、食べ物のことになると冷静なんだな」
「そこは自信ある!」
「褒めてねぇよ」
そのやり取りに、柊弥さんが吹き出した。
「さすが希遥だね」
私も茉尋もつられて笑う。
停電してから初めて、リビングに笑い声が戻った気がした。
「じゃあ」
柊弥さんが冷凍庫の方を見る。
「停電中だけど、食べちゃう?」
「柊弥ナイス!」
希遥さんの声が一段と明るくなる。
「ほら!茉尋くん!4個目のアイス食べよう!」
「え、4個目……?」
茉尋は私をちらっと見る。
「……いい?」
その視線がなんだか可愛くて、思わず笑ってしまう。
「今日だけね」
「やった!」
希遥さんと茉尋がそろって冷凍庫へ向かう。
想くんが扉を開けると、冷気がふわっと流れ出した。