気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「今日も暑そうだね」
「32度だって」
「もう聞き飽きた」
2人で笑ったその時。
「おはよー!」
元気な声と一緒に希遥さんがリビングへ入ってきた。
寝癖はそのまま。
Tシャツも少ししわしわ。
それなのに朝から元気なのは、この家で希遥さんくらいだ。
「茉尋くん!」
「はい?」
「今日どっか行きたいところある?」
突然の質問だった。
茉尋は少しだけ考える。
「……浅草とか?」
「ベタ!」
「じゃあスカイツリー」
「もっとベタ!」
「えぇ……」
困った顔の茉尋を見て、思わず笑ってしまう。
すると。
「じゃあさ」
希遥さんがにやっと笑った。
「今日はみんなで、茉尋くんの東京観光しよっか」
「え、いいの?」
「もちろん!」
「俺も午後からなら空いてるよ」
後ろから柊弥さんの声が聞こえた。
「俺も」
いつの間にかリビングへ来ていた想くんが、冷蔵庫から麦茶を取り出しながら短く言う。
「想も行くの!?」
「なんだよ」
「いや、珍しいなって」
「別に」
その一言に、希遥さんが楽しそうに笑った。
「じゃあ決まり!」
夏休みも、残りはあと少し。
茉尋が東京で過ごす最後の1日が、始まろうとしていた。