天才と天才

10,頭脳の天才

六人で懐中電灯を手に、薄暗い森の中へ足を踏み入れる。

昼間だというのに、木々が空を覆っているせいで辺りはひんやりと薄暗い。

「なんか、普通に怖いんだけど……」

結愛が私の腕にぎゅっとしがみついた。

「大丈夫だよ」

そう言いながらも、私も少し緊張していた。

先頭を歩く新は、地面に残る足跡をじっと観察している。

「足跡は一人分。しかも大人じゃない」

「なんで分かるんだ?」

陸が首を傾げる。

「歩幅が狭い。体重も軽い」

さらっと答える新に、陸が感心したように口笛を吹く。

「さすが頭脳の天才」

その時。

「止まってください」

後ろを歩いていた美琴が鋭い声を上げた。

全員が足を止める。

「どうしたの?」

私が聞くと、美琴は前方の地面を指差した。

そこには、細いワイヤーが木と木の間に張られていた。

「うわっ、全然見えなかった……!」

結愛が息を呑む。

「引っかかれば転倒していたでしょうね」

「ナイス、美琴」

私が言うと、美琴は少しだけ頬を赤くした。

「べ、別に。このくらい普通です」

陸がしゃがみ込み、ワイヤーを外す。

「ってことは、犯人は俺たちがここに来るのを予想してた?」

「違う」

新が即座に否定する。

「これは“侵入者全般”への罠だ。かなり前から仕掛けてあった可能性が高い」

「つまり、計画的ってことか」

蒼真が珍しく真面目な顔になる。

さらに進むと、小さな開けた場所に出た。

そこには古びた倉庫がぽつんと建っている。

そして、その前には——

私たちの班の食材箱。

「見つけた!」

私が駆け出そうとした瞬間。

新が腕を掴んだ。

「待て」

「え?」

次の瞬間。

ガタンッ!!

頭上から大きな網が落ちてきた。

寸前で新に引き戻され、私はなんとか避ける。

「危なっ……!」

陸が目を見開く。

「また罠かよ!」

「随分と手が込んでますね」

美琴が険しい表情を浮かべる。

すると、倉庫の中から物音がした。

ギィ……と扉が開く。

現れたのは、小柄な人影。

フードを深く被り、顔が見えない。

「誰!?」

私が叫ぶ。

その人影は少し肩を震わせたあと、突然走り出した。

「逃がすか!」

私は反射的に地面を蹴った。

運動神経には自信がある。

一気に距離を詰める。

相手も速い。

けれど——

「そっち塞いだ!」

陸が横から回り込み、

「逃走経路、右三メートル先の木の裏!」

新が指示を飛ばす。

私は方向を変え、一気に踏み込んだ。

「捕まえた!」

相手の腕を掴む。

フードが外れた。

現れた顔を見て、全員が目を丸くした。

「……え?」

そこにいたのは——

この研修施設で雑用をしている、小学生くらいの少年だった。
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